2021/12/26 10:24
私が型染を始めたのは、和紙に版画として制作する型染版画がはじまりでした。
(現在は、布に柄をつける半襟やハンカチなどの制作も手掛けております)
和紙の版画には、糊を使います。布の作品には、ほぼ使いません。
制作スペースなどの関係でこのやり方に落ち着いています。
作品はスケッチから始まります。
紙に向かって鉛筆で、その時に自然と出てくるものをただ描いてゆきます。
メモのようなものです。
その時の状態によって、するすると出てくる事もあり、なにも出て来ない事もあります。
なにも出て来ない時は、スケッチにしがみつく事はせずに別の事をします。
マンガを描く仕事をしたり、家の事をしたり、他の仕事をしたりします。
そうやっているうちに、形がするすると出てくる時が来ます。
スケッチの段階から、「型」になる線が出てきます。
絵を描いてから「つなぎ」を入れるのがあまり好きではなく、
絵の中に自然と「つなぎ」が入っているのが一番しっくり来ます。
「つなぎ」というのは、絵のパーツが離れていては型に出来ませんので、
全体がつながっているようにする部分のことです。
型が出来てしまえば、あとは和紙に糊置きをして、顔料で色入れをして、水に浸して糊を落とします。
出来上がった絵に上から色を入れる事もあります。
顔料は、藍や弁柄などを豆汁(大豆でつくります)で溶いて使います。
雲母や膠などを使う事もあります。
合成インクの匂いやテクスチャがあまり好きではなく、
作業中に具合が悪くなったりするのも困りますので
出来るだけ自然なものを使うようにしています。
(身に着けるものは合成顔料を使用しています。洗濯に耐える必要のためです)
型染版画を最初に見たのは、芹沢銈介氏の作品です。
とても端正で美しく、惹かれました。あのテイストを最初は真似しようとしていました。
その後、岡村吉右衛門氏の型染版画を見て、感覚がすっかり変わりました。
「型染」っぽさがほぼ無く、深いテーマを持った作品でした。
本物の作品を見て、どんな技法で出来ているのかと考えて、自分でやってみたり、
岡村氏の著作を読んで、奥にある哲学のようなものを学ぼうとしました。
それは今でも続いています。
とても近づく事は出来ない、遠くに光る星ですが、学びながら
私は私の哲学と世界を描いてゆきたいと思います。
版画は日常の中にあるものですが、日用品とは別の分野を担当します。
心や魂の部分です。
日々の暮らしの中で、特に目立って困る事がなく、お金やモノは普通に足りている時に、内側で何かが進行している時があります。
心の深いところから響いてくる 「足りない」 という小さな声。
そこを担当するのが、芸術です。
zbameの版画は、心を鎮めるものと、荒ぶる魂をそのまま描いたものとがあります。
今のあなたに必要なものに、ここで出会って頂けましたら、とても嬉しいです。